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「プロランナーとして、私が今伝えたいこと」 東京五輪かけた最後の戦いに挑む岩出玲亜

3月8日に開催される名古屋ウィメンズマラソン。東京オリンピックの女子マラソン日本代表、最後の1枠をめぐって、トップランナーたちがしのぎを削ります。アンダーアーマーに所属する岩出玲亜も、このレースに最後の望みをかける選手の1人です。しかし、彼女が走る理由はそれだけではありません。プロランナーとして過ごした2年半で、大きく変わった環境と取り組み。今の素直な気持ちを岩出に聞きました。


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後悔したくない。実業団を飛び出してプロの道へ

2017年7月、岩出はアンダーアーマーの一員となりました。安定した実業団チームの環境を捨てて、プロランナーの道を選んだ理由をこう話します。

岩出
5年くらい実業団チームに所属していたのですが、自分の中でもう少しこうしたいな、というのがありました。陸上の長距離界、特に女子の場合は、監督の言う通りに1から10までやるというのが当たり前です。たとえ自分の意見を持つ選手がいたとしても、聞き入れてくれる指導者は少ないので、言わないことがほとんどだと思います。仮に何かを主張したとしても、「生意気言うな」と押さえつけられるのではないでしょうか。もったいないなと思います。私はそこで終わりたくなかった。
学生の時に思い描いていた実業団ランナーは、もっと強くてキラキラしていて、、そんな存在でした。でも、現実は門限があったり、オシャレやソーシャルメディア(SNS)の発信が制限されたり。監督に言われたことをやるだけで、管理された学生の延長でした。私はそんな閉鎖的な陸上界を変えたい、自分で納得して後悔のない取り組みをしたいと思い、プロに転向しました。
アンダーアーマーに来て初めて「どうしたい?」と聞かれました。今までは、監督から「これをしろ」と言われるだけだったのが、自分で考えて練習するようになりました。これまでの競技人生をいかに無思考に過ごしてきたのかと気づかされたのと同時に、自分で考えるようになったことでよりストイックに物事に取り組めるようになれたし、人間的にも大きく成長できたと思います。


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自分の殻を破るためのチャレンジ

私たちアンダーアーマーが、これまでに陸上の長距離選手をサポートした実績はゼロ。シューズの開発から日々のトレーニングまで、すべてが試行錯誤の連続でした。岩出は、道なき道を切り拓いていく中で強くなったと言います。

岩出
他のスポーツメーカーだと、既製のシューズの中から好きなものを選んでね、というケースがほとんどだと思います。しかし、アンダーアーマーは私のために一からシューズを開発すると言ってくれました。初めてのことだったので、最初はうまく自分の要望を伝えられませんでした。そんな状況でも、好みを汲み取ってレースシューズという形にしてくれた。本当に感謝しかありません。一度、レース直前にカラーを私の好きなピンク色に変更してくれて、そしたら重さやフィット感まで変わった時はめちゃくちゃ焦りましたが(笑)、今となってはいい思い出です。
(アンダーアーマー に所属するまで)ウェイトトレーニングは一度もやったことがありませんでしたが、継続することで少しずつ身体が変わっていき、ランニングフォームも良くなっていきました。今ではジムのない遠征先に、「ケトルベル」と呼ばれるダンベルを自分で購入して持参するほど、トレーニングはなくてはならないものになっています。
また、ケニアで行なった3週間の合宿では、人間的に大きく成長できました。生活環境におけるカルチャーショックが大きくて、2日目にはホームシックになったのですが、置かれた状況で最善を尽くす力というか、キャパシティが広がったと思います。生きていれば予期せぬ出来事や思うようにいかないことがたくさんあるわけで、そこでイライラしたり落ち込んだりするのではなく、いい意味で開き直れるようになりました。

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「食べることにびくびくしなくていいんだよ」

岩出にとってもっとも大きく変化したことの一つが食事に対する考え方です。食べるもの、食事の量、タイミングや回数などすべてが変わったと言います。

岩出
以前はフルーツと炭酸飲料を摂るくらいで、今考えればまともな食事を摂っていませんでした。太るのが怖かったからです。日々、グラム単位で体重を管理するランナーにとって、食べることは悪いこと。だから、私には「食べる」という習慣がありませんでした。
アンダーアーマーでは定期的に血液検査を行うことはもちろん、腸内細菌の状態を調べることでコンディションの維持を図ってきました。様々な検査、測定を通じて、いかに食事が身体やパフォーマンスに影響しているかということを教えてもらいました。食事の大切さを知ることで、少しずつ興味が膨らみ、自然と食べるようになりました。
今では以前の5倍ほどは食べていると思います(笑)。そして、食べても意外と太らないんです。自分に合った体重の落とし方さえ知っていれば、食事は怖くありません。また、ベスト体重という考え方も何を根拠とするのか、曖昧だと思います。仮に体重が増えても、パフォーマンスが良ければそれがベスト体重かもしれません。私の場合、オフには1カ月くらい体重を測らないこともあります(笑)。数字を見てショックを受けるくらいなら、測らない方がいい。特に若い学生の子たちには、食べることにびくびくしなくていいんだよ、ということを伝えたいです。

下記、体重調整についての岩出の投稿には、学生ランナーをはじめ大きな反響が寄せられました。



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MGCを途中棄権しなかった理由

2019年9月15日。東京オリンピックの男女マラソン日本代表の座をかけたレース、マラソングランドチャピオンシップ(MGC)が行われました。岩出は序盤から高速ペースで展開したレースに対応することができず、完走した9人の選手の中で最下位という結果になりました。
このレースで五輪代表が内定するのは上位2名のみ。五輪内定の可能性がなくなった時点で途中棄権するという選択肢もあったと思います。しかし、岩出は最後まで走りきった。彼女はその理由をこう語ります。

岩出
子どもの頃から何百回とレースで走ってきた中で、自分の後ろに1人もランナーがいないという経験は初めてでした。私が最終走者。それがどういうことかというと、沿道の人たちは私のために最後まで残ってくれているんです。うれしかった。走っていて、あんなに胸がいっぱいになったのは初めての経験でした。まだ先にも沿道に人が見える。レースをやめようとはとても思えなかったし、気づいたら最後まで走りきっていました。
この日に向けて調整もうまくいき絶好調だったのに、結果が出なかった。それは自分の中でもショックだったし、正直今でも不安になることはあります。けれども、自分を応援してくれる人がたくさんいることに気づき、学ぶことができたレースでした。

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岩出玲亜はなぜ走るのか?

「東京オリンピックに出て、引退すること」
2017年、アンダーアーマーに入社して初めてのミーティングで、岩出はランナーとしての目標についてこう語りました。しかし、岩出が走る意味や目的はこの時とは大きく変わっています。

岩出
東京オリンピックのマラソン日本代表になる。この目標は変わりません。けど、今の私にはそれだけじゃありません。
もともと、アウトプットが苦手で、自分の思っていることを伝えるのが得意じゃありませんでした。人の好き嫌いが激しかったですし、正直、コミュニケーションを取るのがめんどくさかったんです。自分から発信することはなく、人前で話す機会もありませんでした。やるのは全部監督。
アンダーアーマーに来てプロになって、自分のやりたいことをやろうと思いました。好きなオシャレをして、インスタグラムを中心に発信を始めました。少しずつフォロワーさんが増えて、今では1万6千人以上の人が私の投稿を目にしてくれています。
「落ち込んでいたけど、岩出選手の言葉で元気になった」
そんなうれしいコメントも、たくさんいただけるようになりました。
昔は自分のためだけに走っていました。接点があるのは会社の人くらい。
それが今は、声を聞くこともなかった市民ランナーやファンの方と繋がり、リアルに自分を応援してくれる人たちの存在を肌で感じられるようになりました。そうすると、それに応えられる走りがしたい、発信をしたいという思いが強くなっていきました。走る目的が変わっていったのです。
プロランナーとして今、言えること。
それは、私はタイムや順位、その先にあるメダルのためだけに走っているのではないということです。私の走りを見て「明日も頑張ろう」と思ってもらえるよう、応援してくれる人のために走りたい。そう感じてもらうためにも、名古屋ではプロとして活動してきたこの2年半の思いを込めて、全力で走ります。

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