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スノーボードアルペン銀メダリスト 竹内智香がたどり着いた一番大切なこと


突然ですが、3月は「女性史月間」というのをご存じでしょうか?
女性史月間は1970年代のアメリカにおいて、女性の社会的地位の向上や性別における平等などを推進する活動から始まりました。80年代には3月が公式に女性史月間として認められ、その活動は欧米各国に広がっています。アンダーアーマーのWOMEN’Sプロジェクトチームが、「女性にとって意義深いこのタイミングで、私たちにできることは何か」と考えたとき、行き着いたのは“スポーツを通して女性を勇気づける”ということでした。

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具体的な取り組みとして、「スポーツを通して女性をエンパワーする」というテーマを設定し、新ブランドムービーを作成しました。動画では、アンダーアーマーの契約アスリート、ライフスタイルモデル、ヨガ指導者と各分野で活躍する5人の女性たちにフォーカスしています。こちらのnoteでは、5日間連続で彼女たちのインタビューを全編にわたって掲載。どんな状況でもブレることなく、信念を持って自身の夢や目標に向かって進む彼女たちの姿を通して、スポーツのある生活の素晴らしさや、自分らしく生きることの大切さを発信していきます。


第1回はアンダーアーマーの契約アスリートで、アルペンスノーボーダーの竹内智香さんです。竹内さんは2014年のソチ五輪で、スノーボード競技において日本人女性初となる銀メダルを獲得したスノーボード界の第一人者。18年に開催された平昌五輪に出場した後、竹内さんは競技を続けるか、新しい道を歩むか、大きな人生の岐路に立たされます。悩んだ末に彼女が下した決断、そしてたどり着いた答えとは。

(聞き手=大森紗帆)

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竹内智香(たけうち・ともか)
1998年の長野五輪に感動して、中学生の時にスノーボードを始める。
2002年、ソルトレークシティ五輪に初出場すると、14年のソチ五輪でスノーボード競技において日本人女性初となる銀メダルを獲得した。22年の北京五輪では、冬季で日本女子単独最多となる6大会連続出場を目指す。

アスリートとして、女性として


―アスリートに限らず、女性には“年齢の壁”があるとよく言われます。この問題について、どのように考えていますか?

人生において、30歳くらいを一つの区切りに考えている女性が多いのではと思っています。子どもを産むのが平均して30歳前後だとすると、そのくらいの時期から結婚や出産について考え始めるからではないでしょうか。34歳で迎えた2018年の平昌オリンピックの時は、自分の中でもアスリートとしてというより、1人の女性として人生を考え、決断していました。


―2018年の平昌五輪が終わった後、競技を続けるか、出産に向けて準備するか悩んだとうかがっています。そして、最終的には「卵子凍結」という第3の選択をされました。この決断に至るまでの経緯を教えてください。

もしも年齢のリミットがないのであれば、1年でも長く競技を続けていたいという思いがあります。一方で子どもを産み、育てたいという思いもある。男性は家族をもってプレーするトップ選手もたくさんいて、うらやましいなと思うこともありました。どうしたら両方を実現できるのだろうと考えた時、卵子凍結という方法を知りました。その選択をすることで両方手に入る可能性があるのならばトライしてみる価値はあると思い、100パーセントの保証はないけれどやると決めました。


―実際に卵子凍結をされて、何か心境の変化はありましたか?

体調の変化などもあり、想像していたよりも大変な作業でした。しかし、卵子を凍結するのは子どもをタイムカプセルに置いてくるような感覚で、人生の選択肢が広がるような、何とも言えない安心感を覚えました。時間に対するストレス、タイムリミットから解放されたことで、より競技に打ち込めるようになったと思います。


女性がもっと活躍できる社会を実現するために

―竹内さんも競技から離れていた時期があったわけですが、アスリートに限らず、女性が出産や育児を経て一線に復帰するのは大変なことだと思います。日本の現状をどう考えていますか?

男女平等を考えた時、海外にはスポーツや会社組織などにおいて、女性の参加率や構成比を法律で決めているケースがあると思います。私の考えとしては、必ずしも女性の役員が増えていくことが大切なのではなく、ハンデがない対等な環境で仕事をして、最終的にフィフティフィフティになっていけばいいと思っています。職業によって男性が得意な分野もあれば、女性が力を発揮しやすい役割もあると思うので。そして、アスリートにとって子どもを産むというのは、とても大きなライフイベントです。安心して出産や育児ができて、その後の競技復帰もできるよう、本人の努力はもちろん、周りのサポート体制が重要になってくると思います。

―男性と女性がフェアに評価されるために、どのような仕組みが有効でしょうか?

日本は、一人の人にかかる負担が大きいと思っています。プロジェクトなどでもリーダーに大きな負担がかかるので、ライフイベントの影響を受けやすい女性には任せられないとなってしまう。例えば、スウェーデンでは男性と女性が半年ずつ育休を取ったりするのですが、一人に頼りすぎない、サポートし合える仕組みをつくることができれば、自然と女性が生きやすくなると思います。また、ジェンダーについてフェアに考えられる経営者や、そういった立場にいる人たちが増えていくこともポイントだと思います。


忘れかけていた大切な気持ち


―競技の第一線を退いていた時、再び世界で戦おうと思ったきっかけはあったのですか?

子どものころからずっとメダルを目指してきて、気付いたら、スノーボードをすること自体の素晴らしさを忘れかけていました。平昌五輪が終わった後は苦しいことや辛いことの連続で、34歳という節目でもあり、そろそろ現役を退く時なのかなと考えていました。しかし、応援してくれる方たちが、まだまだ次を期待してくれているというのも感じました。一度、競技から離れてゆっくり自分と向き合う中で、純粋にウィンタースポーツを楽しむ人たちと一緒に滑る機会がありました。子どもの頃のような気持ちでスノーボードを楽しんだ時に、雪山にいることがどれだけ素晴らしいことなのか、思い出すことができました。


―現役に復帰されて、競技に取り組むスタンスや考え方は変わりましたか?

2018年の平昌オリンピックまでは、金メダルだけを目指してやっていました。2年半、競技の一線から離れて、パフォーマンスディレクターをやったり、子どもの育成に携わったりする中で、たくさんの世界を見ることができました。そこで感じたのが、人生は自分自身のものであって、誰かのためにあるのではないということです。もちろん、周囲に対していろいろな責任はあるけど、他人のために頑張るのではない。第一に自分のために。そうすれば、周りの人たちにも自然に喜んでもらえると考えるようになりました。

自分の気持ちに素直になった今、昔のような緊張感やストレスはありません。雪上にいたい、スノーボードがしたい、という原点に戻れているからです。以前ならどん底に落ちて苦しんでいたような状況でも、いつか自分の時が来ると思えるようになりました。結果が出ない自分も受け入れられる余裕ができたので、失うものがない、怖いものがないという感覚です。体力や環境が許す限り、1年でも長くスノーボードを続けたいと思っています。


―竹内さんが一線への復帰を決断された時は、ワールドカップなどの大きな大会が開催されるかどうかも分かりませんでした。試合がないかもしれないという状況で、どうしてそれを受け入れることができたのですか?

繰り返しになりますが、今の私はオリンピックやワールドカップがすべてとは思っていません。もちろん、すべてを懸けてやっているので大会はあってほしい。しかし、変えられないこと、自分では決められないことについて、パワーは使いません。わずかでも変えられる可能性があるのなら努力するけど、変えられないのなら受け入れる。今できることに集中して、その結果キャンセルになったとしても、やってきた過程を財産にすればいいのです。目指した先で夢が閉ざされたとしても、自分がやってきたことはなくなりません。朝起きてやりたいことをやっているか、居たい場所にいるか、会いたい人に会っているか、自分に問いかけてみるといいのではないでしょうか。そこに自信を持つことができれば、起きる出来事はすべて受け入れられると思います。


―アスリートとして女性として、この先どんな姿を目指していますか?

5年後、10年後のことは考えていません。試合でより良い結果を残して、仲間や応援してくれる人たちと喜びをわかち合いたい。そこにフォーカスしています。もう一つ、この年齢になっても競技を続けている理由は、次代を担う子どもたちの存在です。スノーボードの育成プロジェクトに携わっている中で、子どもたちに何かを伝える上で、自分が現役の選手として滑っていることには意味があると思っています。自分のパフォーマンスを通じて、しっかりと次の世代につなげていきたいのです。

日本ではまだまだサポートの力は弱いですが、いつか子どもたちに世界一のスノーボード環境を提供したいと思っています。よりよい環境を提供して、もっと多くの子どもたちがウィンタースポーツを楽しめるように活動していきたいです。


自分らしく前へ進もうとする、すべての女性たちへ


―私たちは今回のキャンペーンで、「スポーツを通して女性をエンパワーする」というテーマを掲げています。さまざまな責任やストレス、プレッシャーと闘っている人。女性として何かをあきらめないといけないのではないか、と不安や孤独を感じている人。周りの目が気になって、自分らしく生きることができない人。そんな人たちが勇気をもって一歩を踏み出すためには、どうしたらいいでしょうか?
最後にメッセージをお願いします。

コロナ禍というのもあって、みなさんそれぞれの状況が違う中で、自分の課題と向き合っていると思うので、安易にメッセージを残すことは難しいです。それでも私が言えるのは、苦しい時には苦しいという、喜怒哀楽の感情を出せる場所をつくっておくことが大切だということです。私の場合、競技のことで悩んだらこの人に電話するというように、一つひとつのテーマにおいて、助けを求める人たちが決まっています。また、真正面から問題に向き合うことも大切ですが、時には見て見ぬふりをしてもいいと思います。いろんな解決策を事前に考えておくと、楽に生きていけるのではないでしょうか。

「何かをあきらめないと…」と感じている人にアドバイスできるとしたら、生きていく中でほしいものが手に入るということの方が、少ないなのかなということです。私の場合、どんなに努力しても金メダルは手に入らないかもしれないし、夢はかなわないかもしれません。しかし、簡単にあきらめることなく、それぞれの場面で最善だと思う選択をして、一歩ずつ進んでいくと、人生の中で後悔が少なくなると思います。少なくとも、私はそういう生き方をしたいです。

最後に、周りの目が気になってしまうという方へ。私は、世界中にはこれだけの人がいるのだから、無理に合わない人と一緒にいることはないと思っています。背伸びしたり、我慢したりして生きていく必要はないのです。一度しかない人生、もったいない。周りにどう思われるかではなく、生きたいように生きていくと、周りにも自分に合った人が増えていき、うまく生きていけると思います。周りの評価はあまり気にしないで、自分らしく生きていくのが大事ではないでしょうか。


UNDER ARMOUR WOMEN’S「 私らしく、前へ」

UNDER ARMOUR|THE ONLY WAY IS THROUGH. 「私らしく、前へ 」竹内智香


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