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「UAベースボールをNO.1に」 元プロ野球選手・喜田剛が選んだ第2の人生

アスリートのセカンドキャリアって、最近よく話題になりますよね。

オリンピアンや元Jリーガーなど、株式会社ドーム(アンダーアーマー)には各競技の第一線で活躍していた、多くのトップアスリートが入社してきます。その中には、元プロ野球選手もいます。今回ご紹介するのは、阪神タイガースや広島東洋カープなどでプレーし、2013年に私たちの仲間となった、喜田剛(きだごう)のストーリーです。

そもそも、今回の記事ではアンダーアーマーの野球担当が取り組む「ファンベース」についてご紹介する予定でした。ファンベースとは、ブランドが大切にする価値を支持してくれるファンを土台として、中長期的に売上の拡大などを図る考え方です。年末にアンダーアーマー直営店「ブランドハウス新宿」で開催したファンミーティングの様子を取材して、このプロジェクトを中心になって進めている喜田にインタビューし、「そう言えば、喜田さんってなんでうちで働いてるんですか?」と深掘りしていくと、熱い思いが溢れ出てきたのでテーマを変えたのです。彼のキャリアや信念を通じて、アンダーアーマーベースボールが目指すものの一端もお伝えできると思ったから。

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現役引退。何をしたいのか分からない

2002年に阪神に入団した喜田は、広島、オリックス、横浜(現DeNA)と4球団を渡り歩き、2011年に現役を退きました。引退後、独立リーグ「四国アイランドリーグplus」のチームでコーチを務めましたが、自分の進むべき道について悩みます。周囲に相談する中で「一度、世の中を知った方がいいよ」とアドバイスを受けたことから、本格的に就職活動を始めました。

喜田
就職サイトに登録して、ハローワークにも行きました。特に志望の職種はなかったので、思いついた会社を片っ端から。40社くらいエントリーして、半分くらいは書類選考で落とされました。十数社の面接を受けて、最終選考まで行ったのがわずか2社。そのうちの1社からは明日にでも出社しろと言われましたが、面接の時に社員が腕を電話の受話器にくくりつけて、営業電話をかけ続けるブラックな光景を見てしまったので、逃げました(笑)

そんな時にアンダーアーマーから連絡がありました。実は、一度採用面接を受けて落ちていたのですが、子会社を立ち上げるので、川崎のベースボールハウスで働いてみないかと声をかけてもらいました。

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「オレたちはヴィトンやぞ」

2013年4月、喜田は前年にオープンしたばかりのアンダーアーマーベースボールハウス川崎久地に勤務することになります。アンダーアーマーの野球商品を販売する店舗の横に、バッティグセンターが併設された複合型の施設です。

喜田
それまでバイトもしたことなかったし、人に頭を下げたこともありませんでした。しゃべり方を直すことからのスタート。そして、入社して2カ月も経たない頃に店長をやれと言われました。アルバイトのシフト管理に、売上や人件費などコストの計算、右も左も分かりませんでしたが、自分がやらないとお店が潰れてしまう。これで完全にスイッチが入りました。

喜田は「元プロ野球選手」という肩書きを生かして、野球教室を積極的に開催します。さらに、ソーシャルメディアを使って、お店からの情報発信にも意欲的に取り組みました。野球教室に通う子どもたちをはじめとして、常連の顧客を少しずつ増やしていき、13カ月連続で売上目標を達成。店舗の運営を軌道に乗せました。

喜田
コンセプトは秘密基地で、子どもたちが野球を練習しに集まってきてくれる場所を目指しました。バッティングセンターってとにかく汚い。あのイメージが嫌だったんです。野球少年が憧れる場所にしたかった。だから、働いているスタッフには、「オレたちはヴィトンやぞ」と伝えました。「ダンボールは見えないところに」「汗のかいたバッティンググローブを干すな」など細かいことを口うるさく言うことで、自分たちは高級ブランドなんだという意識を常に持ってもらったんです。

トップを目指すための「今宮獲得」

2015年に本社のスポーツマーケティングへと異動になった喜田は、元の職場でもあるプロ野球を担当することになりました。今まで培った人脈なども使いながら野球界におけるアンダーアーマーの立ち位置をリサーチし、冷静に分析してたどり着いた結論が、守備の名手と契約して、アンダーアーマーのグラブを使ってもらうというものでした。

喜田
やるからには一番になりたいので、「ベースボールでアンダーアーマーがNO.1になる」という目標を掲げました。しかし、実際にはプロ野球界の中で、アンダーアーマーの認知度はまだまだ低かったんです。福岡に出張した時、球場で顔なじみの記者から、「柳田選手ってアンダーアーマーだったんですね。全然知りませんでした」と言われてショックでした。毎日現場にいる番記者にすら、アンダーアーマーを認知されていない。取り組みを見直す必要があると感じました。

当時、アンダーアーマーには柳田悠岐選手や、糸井嘉男選手など打撃が売りの契約選手がそろっていました。しかし、アンダーアーマーの知名度を上げるには、グラブをもっと露出しないといけない。そこで、主に12球団のショートをリサーチして守備の名手獲得を目指しました。狙いを定めたのがソフトバンクの今宮健太選手。最初に今宮選手と会話した時に、「最高のグラブが来たらオレは使う」と言ってくれた。だから、後発の自分たちでもチャンスがあると思ったのです。

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喜田は工場や職人の元を訪れ、今宮選手が求めるグラブを模索しました。本来は自分の仕事の領域ではない皮の問屋にも職人と一緒に訪問し、良い素材を仕入れます。そうしてできたサンプル商品を持って、今宮選手の遠征に帯同。さらにヒアリングを重ねました。皮の加工手法による「しっとり感」といった、わずかな感覚の違いにこだわり、微修正を施していきます。
2015年のクライマックスシリーズが開催されている頃、試行錯誤の末、ついに今宮選手に納得してもらえるグラブができました。

喜田
手応えはありました。しかし、多くの人を巻き込んで、時間もお金も使っていたので、ほっとした、というのがグラブを認めてもらえた時の正直な気持ちでした。

そして今宮選手は2016年と2017年シーズン、喜田が苦労の末に完成させたアンダーアーマーのグラブを使用して、ゴールデングラブ賞を獲得しています。

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もう一人、喜田が契約を勝ち取った球界を代表する選手が、オリックス・バファローズの吉田正尚選手です。獲得の経緯は喜田の一目惚れでした。

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喜田
吉田選手がルーキーの年、2軍のキャンプを視察していました。そこでたまたま見た吉田選手のフリーバッティングに衝撃を受けました。身体は173cmと小柄なのに、スイングのインパクトの瞬間の音がまったく違う。自分自身、現役の時からインパクトの音にこだわっていて、一流と呼ばれる選手はそれがまったく違うんです。吉田選手のバットからは文句なく一流の音が出ていた。だからその日の練習後にオファーを出しました。翌日にはすべてのアンダーアーマーのアイテムをそろえて渡しました。ここまですべて、独断で動きました。会社には事後報告です。こういう仕事の進め方は自分の悪いところでもあるけれど、吉田選手は絶対に活躍するという確信があったので、1秒でも早く契約したかった。

喜田が獲得した今宮選手と吉田選手。このエピソードに共通しているのは、彼は一度やると決めたらとことんやるということです。時には組織のルールを無視してまでも。昔はよく怒られたと喜田は笑います。しかし、その背景には仕事に対する信念と執念、そして元プロ野球選手として、結果の責任は自分が取るという覚悟が感じられます。

UAベースボール×ファンベース

喜田さん

昨年から、喜田はスポーツマーケティングの現場を離れて、現在はソーシャルメディアをはじめとした、マーケティング全般を担当しています。動画を撮影してアンダーアーマー公式インスタグラムやTwitterに投稿することで、いかにしてアンダーアーマーのファンを増やしていくか。日々奮闘する中で出会ったのが、冒頭で紹介した「ファンベース」という考え方でした。

喜田
スポーツマーケティングを担当していた頃は、とにかくアンダーアーマーベースボールが少しでも露出されることを考えていました。しかし、今の時代マスメディアを使った宣伝だけでは必ずしも商品の売り上げに直結しない。そんな時に出会ったのが、ブランドの熱狂的なファンを土台に売上を伸ばす、ファンベースという考え方でした。専門家の講演を聞きに言ったり、様々な関連セミナーに参加したりしました。現在はファンベースの仕組みをアンダーアーマーベースボールに取り入れるために、イベントを企画するなど試行錯誤している段階です。

昨年の12月には、BH新宿でアンダーアーマーベースボールのファンミーティングを初開催しました。コアなファンの方々に集まっていただき、アンダーアーマーベースボールの好きなところや改善点など、思い思いに意見を言ってもらいました。「思っていた以上に厳しいご意見をたくさんいただいた」と喜田はイベントの感想を語っていましたが、その表情はとても充実していました。

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最後に、喜田がアンダーアーマーで働いている理由、目指すものをあらためて聞きました。

喜田
自分の中でずっとあるのは、拾ってくれた会社や社長に恩返ししたいという気持ちです。たまに、プロ野球で何千万円も給料をもらっていたのに、よく普通のサラリーマンができるねと言われますが、自分は仕事が見つからなくて、10カ月近く無職だった。ずっと給料0円。だから、好きな仕事ができてお金をもらえるのはとてもありがたいことです。

そして、アンダーアーマーベースボールをNO.1にすることで、会社への恩返しができると思っています。野球界でアンダーアーマーを日本一のブランドにする。その思いは入社した時から一切ブレていません。アンダーアーマーの商品はすべてアスリートのために作られたもの。それを日本球界に広く届けたい。もっと子どもたちに使ってほしい。それがすべてです。


ちなみに、恩返しの話は喜田には絶対に書くなと言われました。「オレはそんなキャラじゃないから、きっとみんなに忖度したと思われるやろ(笑)」と。

けど、こういう思いを持って働いている社員がいるということを、読者のみなさまはもちろん、社内の仲間にもぜひ知ってほしかったので独断で書きました。喜田には事後報告しておこうと思います。

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